普賢院本尊の愛染明王②

普賢院の本尊である

愛染明王について

何回かにわたっての紹介いたします。

 

そういえば修行時代に

お世話になった先生が

「住職は本尊のスポークスマンでもある」

とおっしゃられていました。

 

つまりは

本尊の代弁者ということです。

 

当山諸仏の中心として

祀られる本尊愛染明王について

本シリーズは

やや専門的な話題も交えつつ

進めていきたいと思います。

 

『密教大辞典』という

超専門的辞典があり

愛染明王の項冒頭に

以下のように記述されます。

 

  1. 梵語羅誐(らぎゃ)は彩色・赤色・情欲等の義なり、故にその愛欲染着(あいよくせんじゃく)の義を取りて愛染王または染愛王という。この尊は愛欲貪染をそのまま浄菩提心とする三昧にして、瑜祇経(ゆぎきょう、金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経のこと)を本軌とす。(中略)衆生の本有倶生(ほんぬぐしょう)の欲染(よくせん)を直に浄菩提心の金剛薩埵(こんごうさった)の染愛三昧の化身とし、これを愛染明王とす。
  2. また金剛王秘密儀軌にこの尊の真言を説きて金剛王の真言とせり。王に鉤召(こうしょう)の徳ありて海内の民みな王に帰するが如く、愛染よく衆生を鉤召するが故に愛染王と名づけ、金剛王菩薩の化身とす。
  3. また菩薩の大悲は衆生を愛念したまうこと世間の恩愛の如く、この尊は敬愛の三昧にして、衆生をして仏の妙法を愛着せしめ、煩悩即菩提の理に入らしむ、これ金剛愛菩薩の化身なりとす。
  4. ただし金剛王菩薩とは、金剛薩埵の異名なるのみならず、薩・王・愛・喜の四菩薩は共に東方大圓鏡智(だいえんきょうち)菩提心門の尊にして体同義別なるが故に、結局本身は金剛薩埵なり、従って金剛薩埵の十七尊を眷属(けんぞく)とすることあり。
  5. また薩埵(金剛薩埵のこと)即大日の故にこの尊を直ちに大日如来とし、三十七尊を眷属とすることあり。あるいは瑜祇経の大勝金剛心瑜伽成就品第七に愛染王根本一字心明を説けるが故に、大勝金剛は愛染と同体なりとす。覚禅鈔には平等王・咤枳王等の異名を挙ぐれども本拠未審。
  6. 密号を離愛金剛といい、白寳口鈔に離は生死の業因を離れ、愛は菩提の妙果を愛する義にして、離染即愛染なりと釈せり。

『密教大辞典』より引用(※一部ひらがな・簡体字に改めています。一部送りがな・説明を捕捉しています。番号は筆者住職によります。)

 

冒頭部分のみの記述ですが

様々なことが踏まえられてのものゆえ

専門的で分かりにくいと思いますので

捕捉説明を加えつつ

少しずつ読み進めてまいりましょう。

 

まず愛染明王には

様々な名称があります。

 

引用には

羅誐(らぎゃ)、愛染王、染愛王

といった名称が見られます。

 

主要な尊格には

密号(みつごう)というお名前もあり

愛染明王は離愛金剛(りあいこんごう)が

その名となっています。

 

ちなみに

大日如来の密号は

遍照金剛(へんじょうこんごう)です。

 

真言宗では宗祖宝号として

南無大師遍照金剛と

お唱えすることが通例ですが

この遍照金剛は大日如来を指します。

 

これには理由がありまして

弘法大師が唐で入壇した

灌頂(かんじょう)という儀式の

投華得仏(とうけとくぶつ)という作法にて

両部曼荼羅ともに大日如来と結縁したため

弘法大師と大日如来(遍照金剛)が

ひとつの文言に連ねられています。

 

真言宗の本尊である大日如来は

「総体の仏」とされ

あらゆる尊格の本体は大日如来とされます。

 

あらゆる尊格の本体は大日如来とされますが

尊格と尊格の対応関係には

個別具体的に

伝統的に重んじられてきたものや

信仰されてきたものが多くあります。

 

引用文に見られる

愛染明王と同体とされる尊格は

大日如来、金剛薩埵、金剛王菩薩、

金剛愛菩薩、大勝金剛が

挙げられています。

 

このほかにも

愛染明王は不動明王と一体であるとされるなど

様々な関係性が伝えられます。

 

一見複雑な関係に見えますが

これらは修法における

趣旨の違いによっていたり

法流という系譜の違いによっていたり

阿闍梨の意図によっていたりと

色々なことに起因しています。

 

深い御教えが託されているがゆえに

さまざまな対応関係が説かれ

特徴的なお姿をされているといえます。

 

今回はここまでといたします。

つづく