解読困難な棟札に挑む

当山では多くの棟札を

所蔵しております。

 

古いものなので

中には墨がほぼ落ちてしまい

目視による解読が

難しいものもあります。

 

当山では200余年ぶりの本堂建替

という歴史的な節目に

あるということで

歴史や伝承などの整理を

進めております。

 

棟札の整理をしていた所

解読困難な棟札1枚の形状と

宝暦13年(1763)の

愛染堂再興棟札と

天照皇大神宮再興棟札が

酷似していることに気が付きました。

 

棟札の大きさや厚さ

そして釘穴の位置までもが

酷似しているのです。

 

これらの棟札は

両面それぞれに文言が記されております。

 

何のお堂を建立したかを

記した面を仮に表面

その反対を裏面とすると

今取り上げている3枚の

裏面の文言は同じものです。

 

裏面は

棟札上方中央に梵字「バン」が記され

棟札下方中央に梵字「シリー」が

記されております。

 

そしてその梵字の間のスペースには

2行の偈文(げもん)

一切皆善 一切宿皆賢 諸仏皆威徳

羅漢皆断漏 以斯實言 願我常吉祥

が記されております。

 

この偈文ですが

解読困難な棟札でも

かろうじて何文字かを

読み取ることが出来たので

同文であることは間違いありません。

 

さて

問題は棟札の主旨が記される表面です。

 

当山諸堂については

諸史料の記述や

他の棟札により

大まかに分かっております。

 

様々な可能性に思いを巡らせながら

法事の合間などに

角度を変えて観察したり

光の具合を変えて

解読を試みた所

「不動明王堂一宇」と

書かれてあることが判明しました。

 

「再興」という字も

書かれてあるように見えます。

 

この棟札は

宝暦13年(1763)の

不動堂再興棟札だと思われます。

 

宝暦13年(1763)の

愛染堂再興棟札と

天照皇大神宮再興棟札の

双方それぞれに

大檀那大膳大夫利雄公

永福五十二世勅許法印宥恕

の名が記されております。

 

利雄(としかつ)公は南部藩34代藩主

宥恕(ゆうじょ)上人は当山先師です。

 

確信に近い推測ですが

不動堂再興棟札についても

お二方について

記されていると思います。

 

棟札の文字の墨は

ほぼ完全に落ちているものの

何となく何かが書かれてあることは

分かる程度の状態だったゆえ

とてももどかしい思いを

抱かせられていた棟札だっただけに

その内容を知ることが出来て

スッキリとしました。

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