宝暦年間(1751〜1764)の
『御領分社堂』の
修験持の社堂をまとめた巻に
以下のような記述があります。
十和田銀山
一 山神宮 同
往古南蔵坊を
祝候由申伝候
(いわいそうろうよし
もうしつたえそうろう)
ここでの「祝」は
「お祀りする」「祈りを捧げる」
といった意味合いです。
祝詞(のりと)という単語での
「祝」も同じ意味です。
十和田銀山の山神宮は
往古(その昔)に
南祖坊(南蔵坊)がお祀りされ
祈りが捧げられたということが
『御領分社堂』には
記されております。
山神の眷属(けんぞく)は
「お犬さま」とも呼ばれ
狼とされます。
“狼の神”が
「三峯(みつみね)さま」
とも呼ばれることは
柳田國男の『遠野物語拾遺』でも
とりあげられております。
三峯という言葉は
埼玉県秩父の三峯神社に由来します。
この三峯神社が
「お犬さま」や「三峯さま」と呼ばれる
眷属の信仰を各地に広めたといわれます。
奥州市衣川の三峯神社は
享保元年(1716)に秩父の三峯神社から
勧請(かんじょう)したと伝えられます。
県内でも
山の神が祀られ
参道に阿吽の狼が
祀られる所をご存知の方も
多いのではないでしょうか。
山神は
山の神
山ノ神
山之神とも表記します。
東北では
古い猟法に則り
狩猟を行うマタギが
山の神を篤く信仰したそうです。
マタギの伝書に
『山立根本巻』
(やまだちこんぽんのまき)
というものがあります。
『山立根本巻』は
マタギが神仏が司る聖地でもある
お山において
狩猟(殺生)を行うことを
山の神が認可したという
マタギの狩猟の由緒が
記されるものです。
こういった伝書は
様々あるそうです。
マタギに関連する文書には
様々な作法や経文や
真言陀羅尼(だらに)が
多く記されており
神仏への祈りが
大切にされていたことが
伝わってまいります。
十和田湖伝説に登場する
八郎(八の太郎、八郎太郎)は
マタギであるとの
いわれもあります。
全国的なものかどうかは
存じ上げませんが
山神
山の神などと
刻まれたり
書かれた石碑や石が
東北では
寺社仏閣の境内に建てられたり
納められている所が
多く見られます。
当山にも
大きくはありませんが
石が納められております。
山が身近な地域でもあるので
山の神はとても
身近だったのだと思います。
今回は
『御領分社堂』に記される
十和田銀山の山神宮に触れ
山神として祀られた
南祖坊を伝説の諸相の1つとして
紹介させて頂きました。
▼山神の碑(花巻市 光勝寺 五大堂裏手)
▼以下、岩手県立博物館の企画展の写真