三国伝記について①伝説の“最古の語り手”

当山は

十和田湖南祖坊(なんそのぼう)伝説と

ゆかりのあるお寺です。

 

南祖坊という僧侶が

「十和田湖の主」となるというのが

伝説の大きな筋書きです。

 

そして南祖坊は

当山前身の永福寺にて

修行したと伝えられます。

 

この伝説は様々に

語られたり記されたりしまして

主に伊達藩を中心になされていた

東北独特の芸能である

奥浄瑠璃(おくじょうるり)という

語り物の題材にもなっております。

 

ただこの奥浄瑠璃という用語については

使われる方により意味合いが様々で

明らかな語り物としての

奥浄瑠璃ではない

縁起物(えんぎもの)や

霊験譚(れいげんたん)

といった類も含んでいたり

場合によっては「聖職者」が

語ったとされるものまでも含んで

用いられている感があります。

 

十和田湖南祖坊伝説は

山伏やマタギのような

修験と関わりのある者のみならず

“広い層”の方が語り手となり

伝え手となり

それぞれの地域的特色を

帯びていきながら

広く親しまれたようです。

 

この伝説に関わる写本等は

各地にありまして当山にも

『十和田山神教記』

(とわださんじんきょうき)

の写本が残されております。

 

伝説は語られる地域

それを伝える写本によって

実にバリエーションが豊かです。

 

その伝説を伝える最古の書物が

『三国伝記』(さんごくでんき)です。

 

この『三国伝記』を手がかりとして

あらためて伝説と向き合うと

様々なことが浮かび上がります。

 

この『三国伝記』自体は

現在の滋賀県辺りで

玄棟(げんとう)という方により

まとめられたものですが

撰者にまつわる背景や

書物の収録内容を紐解くに

当山の本山である

奈良県の長谷寺に関係する

長谷信仰(はせしんこう)や

十一面観音信仰が

色濃く伺えるものです。

 

撰者の玄棟という方は

善勝寺(ぜんしょうじ)という寺院と

ゆかりのある方とされますが

この善勝寺も十一面観音と

とても関わりのある寺院ですし

『三国伝記』は

長谷寺の霊験記である

『長谷験記』(はせげんき)から

多く引用されております。

 

そういったことに触れながら

この『三国伝記』について

3、4回に分けて

お伝えさせて頂きます。

 

「三国伝記について②」は

9月初頭にアップいたします。

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