美しき梵字

八戸にゆかりのある

思想家でもある安藤昌益

(あんどうしょうえき、1703〜1762)。

 

拙僧(副住職)にとっては

ただ名前を知っていて

昌益思想を代表するフレーズを

2、3程知っている位でして

詳しいことは分かりません。

 

調べ物で

『新編八戸市史』(近世資料編Ⅲ)

を読んでいたところ

昌益関係の資料として

掲載されている

『詩文聞書記』(延享元年(1744))

の翻刻と原本の写真が

目に止まりました。

 

調べてみると

『詩文聞書記』とは

八戸市の天聖寺(てんしょうじ)第8世

則誉守西(そくよしゅさい)上人

記された昌益の講演会の

覚書だそうです。

 

なぜに目が止まったのかというと

梵字が書かれていたからです。

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梵字を用いるのは

真言宗だけではありませんが

殊に真言宗は

真言陀羅尼宗(しんごんだらにしゅう)

ともいう程ですので梵字を

深く学ばなければなりませんし

日常的によく

読んだり書いたりするので

梵字に目が止まるのも

拙僧(副住職)にとっては

ごく自然なことです。

 

掲載されている梵字を見てみると

陀羅尼(だらに、梵字のお経・文言)

というわけではなく

『観無量寿経』の一節や文言

浄土宗や浄土真宗の

お祖師様の一人である

善導(ぜんどう)上人の文言

などの「音」と同音の梵字が

書かれておりました。

 

厳密な音の対応とは

いえませんが

経文や論書の文言

一字一字の「読み」につき

一音一音の梵字が概ね

当てられております。

 

則誉守西(そくよしゅさい)上人

現在の糠部三十三観音霊場の

札番(札所の番号)を

定められた方といわれます。

 

中世以降

和歌は陀羅尼に通じる

尊いものであるとする

「和歌即陀羅尼(わかそくだらに)」

という考え方が出てまいります。

 

今回取り上げた書物は

「詩」をテーマにしているので

和歌や漢詩や陀羅尼に

通底するところについて

昌益が触れつつ講演したのだろうかと

想像を膨らませております。

 

それにしても

(直筆かどうかは分かりませんが

これが直筆だとすると)

則誉守西上人の梵字は

とても絶妙だと感じました。