開創当時を考える⑥

当山2世・月法律師。

 

法名は月法(がっぽう)で

律師(りっし)は僧階

あるいは尊称を指します。

 

現在も律師という僧階はありますが

名称は同じでも

意味合いは当時と全く異なります。

 

かつて

僧綱(そうごう)という

僧尼を統括する「官職」があり

律令時代には

僧正・僧都・律師

といったものが設けられ

律師はその名の通り

戒律に殊に通じた上人です。

 

官職でない意味であるとしても

律蔵(戒律)に精通した僧侶への

尊称としても捉えられます。

 

一般的に

イメージしにくいかもしれませんが

戒律というのは非常に重要なもので

段階に応じて「正式に授かる」

必要があるものです。

 

第2世住職が

律蔵に精通しているという点は

僧侶の立場からすると

とても大きな意味があると感じるのです。

 

実はかなり前から

感じていたことなのですが

「南祖法師(坊)の師僧としての月法律師」

という文章において

「南祖法師の師僧」であることより

月法師が「律師」であることの方が

まず注目すべき点であると

僧侶としては思います。

 

三蔵(経・律・論)のうち

律蔵に精通している律師ということは

かなり権威あることでもあり

その門戸を叩いて

修学・修善の伝授を乞われ

授戒を乞われることも

想像されるのです。

 

その中の一人として

南祖丸(後の南祖法師)が

伝説の主人公として

フォーカスされる

という流れで捉えると

これまでとは違った視点で

南祖法師(坊)伝説を

捉えられると思います。

 

南祖法師は

月法律師に弟子入りし

契機があって師僧の助言で

全国の霊山霊跡を巡った後に

十和田湖に結縁入定して

青龍大権現なる龍神となった

とされる伝説の僧侶です。

 

その筋書きにおいて

月法律師が関わる部分のシーンに

補足すると

①弟子入り:入門・修学研鑽・作務

②全国巡行の助言:出家得度・授戒・伝授

といった要素が

大まかに想定されると思います。

 

絵本『龍になったおしょうさま』の

もとである写本『十和田山神教記』に

描写される南祖法師の

全国巡行では

修法により人助けをする

場面がいくつかあるのですが

それらは実際の修法次第を

踏まえた描写といえます。

 

ここでいう次第というのは

主旨に応じた作法・印明・経文が

したためられたものを指します。

 

そういった次第は

師僧に伝授してもらう

師子相承により

修法が許されるものなので

南祖法師が修法可能であるということは

師僧に伝授されたゆえに

ということができます。

 

さらに南祖法師が

「瞑想」をする場面もあるのですが

そういった行法もまた

師僧に伝授いただく必要があります。

 

しかも最後は

「入定」するという

修行の“高度な状態”に入るわけなので

そのための行法(次第など)についても

伝授する師僧の存在を

想定すべきと思うのです。

 

ということで

南祖法師伝説を

仏教的視点で考えてみると

師僧とされる月法律師の

存在感が見出されます。

 

次回も

月法律師について

さらに深ぼってみたいと思います。

 

つづく