開創当時を考える⑤

「人は悩む」

 

そういったとき

恐らくほぼほぼ

納得いただけると思います。

 

そしてまた

「悩む」ことが

多くの修行者が

修行するに至った

理由として挙げられます。

 

釈尊(お釈迦さま)もまた

「悩んだ」ゆえに出家され

求道・修行の果てに

成道されました。

 

なぜ「悩む」かを把握し

悩みを悩みでなくすために

修行をする。

 

原始仏教経典

『スッタニパータ』などに

目を通すと

様々な「悩み」の訴えに対して

釈尊が諭していく

というやり取りが

いくつも見られます。

 

当山開創当時を考えると

天災・戦災・疫病による

嘆きや苦しみを抱いた方も

多かったでしょうし

歴史的背景を踏まえてみると

様々なことが推定されます。

 

初代・圓鏡師も

出身地は不明ですが

父母がいらして

兄弟姉妹もしたかもしれなくて

師僧や法友もいらして等

相関図を考えてみると

身内のことで

死別があったり

何かしら悩まされたことが

あったかもしれませんし

もしかしたら

戦乱や災害や疫病による

大変な状況に立ち会ったかもしれません。

 

衝撃的で

大きな契機が

出家・修行の動機に

なったのではないかと思うのです。

 

出家得度して

沙弥戒を授かり

法名を授かり

具足戒を授かり

そしてまた

修法を伝授され

諸学を講伝され

修行・修禅・修学に励む。

 

法名「圓鏡」の由来と見られる

大圓鏡智という智慧は

とても重要な位置づけがされるもので

「あらゆるもの全て映し出す鏡」の如く

“あるがまま(自然・真如)に観る”

境地の智慧です。

 

“あるがままに観る”は

執われ(悩み)なく観ることであり

漢字をあてると観自在となります。

 

観自在は

観自在菩薩という尊格名にもある言葉ゆえ

とてもポピュラーなフレーズかと思います。

 

観自在菩薩は

観音様として

当地でも親しまれる尊格ですが

修行においても重要な尊格です。

 

密教では

普門総徳(ふもんそうとく)の

尊格として大日如来という

とてつもなく

スケールの大きい仏の

一門別徳(いちもんべっとく)の

尊格として様々な仏様が

開示されていって

それを表現したものを

曼荼羅というので

観音様もまた

曼荼羅思想を背景として

捉えられていることを

一応ここに付記しておきます。

 

観音霊場の巡礼で

札所を回られた経験のある方は

とても多いと思います。

 

巡礼もまた

修行の一つの形と

捉えることも可能でして

そう考えると

「観音と修行」は

意識せずとも現代にも

かなり浸透しているといえるでしょう。

 

圓鏡師が

十一面観音を本尊として

当山を開創されたのも

意味があってのことと思いますし

この点は

さらに深ぼれそうですが

長くなりそうなのでこの辺に。

 

出生年は不明ですが

過去帳記載の入滅年月日は

初代・圓鏡(817年5月15日)

第2世・月法律師(831年10月16日)

となっています。

 

圓鏡師ご遷化から

月法律師ご遷化までは

14年弱の期間があります。

 

月法律師は

十和田湖伝説に登場する

南祖坊として地元では知られる

南祖法師の師僧とされる方です。

 

南祖法師については

十和田湖伝説を伝える写本のひとつ

『十和田山神教記』をもとに

絵本『龍になったおしょうさま』で

肝要なシーンを紹介しているので

ご興味ある方は

そちらをご覧いただければと思います。

 

▼絵本動画はコチラ

https://youtu.be/-utlyWdwxHk?si=AF0K2l9ccJ5Y_34z

 

伝説は歴史とは異なるものですが

何かの出来事が元となっていて

貴重な情報が散りばめられており

大切にされてきた背景を考察するに

切実なものがあると捉えています。

 

この辺については

既に少々触れたことがあるので

今は深入りしません。

 

さて

当山が所蔵する先の写本では

南祖丸(南祖法師の幼名)は7歳に

当山に入門し

18歳に諸事情あって

得度して南祖法師と“名を改め”て

「修行旅」に出発します。

 

師僧が月法律師とされるので

月法律師が住職でありえたのは

817年〜831年の約14年なので

この期間に随身期間が比定されます。

 

月法律師の法名「月法」について

前回も触れましたが

圓鏡師同様に

仏教的視点から紐解けば

とても深いものがあり

さらに注目したいのは

「律師」であることです。

 

僧綱のひとつである重要職という意味

律に通じている者という意味がありますが

この律師たる月法師について

次回以降は

主に取り上げてみたいと思います。

 

つづく