これまで何度か
棟札(むなふだ)について
紹介したことがあります。
棟札は本堂やお堂などを
建立する際に
制作される木札のことで
それは貴重な歴史史料でもあります。
本堂建替にあたり
総整理を実施して
その成果を「基礎資料」に
反映させて年表にしています。
「基礎資料」については
過去のブログに掲載しており
時折アップデートしているので
ご興味をお持ちの方は
ご参照ください。
研究機関に所属する
一研究者でもあるので
史料や典拠に基づいた
情報整理を行なっています。
伝承や伝説といったものも
いくつか伝えられる当山ですが
そういったものの中には
増広が顕著なものも見られ
広く枝葉が広がった状態になり
それがあたかも古代からの
「定説」かの如くに
宣伝される事象が見られ
それはそれで味わいが
あると感じています。
巷における大衆的な伝承と
寺院における伝承には
異なる意味合いがあるのは当然で
神仏縁起や霊験譚としての
捉え方に方法的差異が
少なからず認められると思います。
魅力的な“面白さ”を
感じていただけることが
目指された語りもあるでしょうし
縁起譚・霊験譚として
仏縁を深め日々の精進の励みに
つなげることが目指された語りも
あるでしょうし
意図は様々に考えられます。
現住職としては
棟札の記述
仏具や仏像の刻字と朱書き
過去帳の記述
墓誌の記述
次第・近世文書の記述
などの整理を通して
「普賢院史」の大筋を
捉えることを
まず第一に目指しました。
まだまだ道半ですが
開創・開基・中興の
三開山上人について
各師の時代背景について
仏教学的視点からのアプローチにも
よりながら紐解きたいと考えています。
実はもう
頭の中では
まとまっているのですが
何かしらの形にする作業で
文字にしてみたいと思います。
ブログで書くかどうかは
分かりませんが
お寺の行事などでの法話では
随時お伝えしております。
普賢院の伝承・伝説と聞くと
当山有縁の方ですと
行海大和尚伝説
七崎姫伝説
南祖法師伝説などが
思い浮かぶと思いますが
それ以外にも
とある檀信徒家のいくつかに
まつわる伝承や
仏像にまつわる伝承などもありますし
表に出す機会の少ないものも多いのです。
「歴史」ついででいえば
本年は太平洋戦争の終戦80年
という節目となりますが
戦前・戦中・戦後の
諸エピソードは
後世に伝承すべきものだと
個人的に捉えています。
「戦争」としては
さかのぼれば戊辰戦争
日清戦争、日露戦争についても
当山では追悼行事が
続けられているので
これもいかに伝承していくかを
考える必要があると感じています。
伝承・伝説には
様々な立場や意図によって
語り方が異なるのは当然として
いざその検証を発願したとき
史料に裏付けられたものに
立ち帰ることが出来るようなものを
整えることは有意義なはずです。
そういった時に
一助となるに耐えるような
「基礎資料」や記事を
コツコツとストック
出来ればと思っています。
尾鰭背鰭がついて
一次情報から飛躍した形に
なったとしても
そのような語りは
いつの世もあったはずですが
ネットが日常的インフラと化した
現在においては
ある程度の「研究倫理」的なものは
意識されるべきと思います。
地の文なのか
引用なのかがあいまいだったり
引用内容が意図的に修正されて
もともとの意味と違っていたり等
ないように
心がけることが
一層必要なのだろうと思います。
まとまりのない内容ですが
以前の棟札に関する
記事を久しぶりに読んだのを
きっかけに惹起したことを
ツラツラと記した次第です。
▼棟札の記事(例1)
▼棟札の記事(例2)
▼享保18年(1733)庫裡(寺屋敷)棟札